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「ザ・パイのパイ」オギノへーマ殴り書き/書き殴り/本音/虚偽/事実/夢想/真実/妄想/本音/無根/吐露/激情/・・その他諸々の五百字詰め。毎日更新!


by ヘーマ

帰る場所

 「行く店」というよりは「帰る場所」。



 ボクが1番好きな居酒屋の親父さんが急死。店は毎日4時開店。しかし、お昼過ぎに店の前を通ると、親父さんは必ず仕込みをしていた。1度コーヒーを差し入れしたことがある。


 店内で電気もつけずに黙々と串打ちをしていた姿を思い出す。古典的な夫婦経営。女将さんが笑顔で接客、親父さんの方は口数の少ない職人気質。これほど調和のとれた夫婦を他に見たことがない。


 そしてたまに手伝いに来る娘さんが美人ときている。ボクは、入院前日と退院翌日に店を訪れた。「これ、快気祝いね。食べて!」そう言って差し出してくれた自家製お新香の美味さといったらもう。


 いつも寡黙な親父さんが、退院後からボクの事を心配してくれて話しかけてくるようになった。けれど、競馬新聞をチェックしていたりすると、そういう時は一切何も言わない。


 会話に割り込むなんて無粋なことは絶対にしなかった人。注文の切れ間に焼き場のところでしゃがみ、じつにうまそ〜にタバコを吸っていた。向かい合わせのカウンター5+5席。奥にテーブル席もいくつかある。


 もちろん常連はカウンター。主(ぬし)級、つまりいつ何時もそこにいる超常連は時間帯で変わる。開店から2時間はAさん、5時過ぎにBさん、6時になるとCさんが現れてAさんが帰る。


 8時過ぎて来るEさんや、銭湯帰りにホッピーを外2だけ飲んでスッと消えるFさん。目礼だけの間柄の人も。客筋にも感心する。これもみなさんが親父さんの心意気を感じているからだろう。


 ボクがあまり外へ飲みに繰り出さなくなったのは、この日暮里の店を知ってからである。他店はダメ!店員、客、雰囲気、味、料金、騒々しいBGM、満足なところナシ。皆無である。さぁ、困ったぞ。


 8月から女将さんを中心に再開するというが、、、現実的に仕込みと焼き場担当を一手にこなす事は不可能に近いと思う。がんばれ!がんばれ!そんな風に励ますつもりはない。


 1月に実父(70代)、その半年後に日暮里の父(60代)を亡くした。死にかけて生き延びることができた友人(50代)もいる。ボクは命ある者として生きていくしかない。ただそれだけである。





ヘーマ


by h72ogn | 2019-07-27 15:04