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「ザ・パイのパイ」オギノへーマ殴り書き/書き殴り/本音/虚偽/事実/夢想/真実/妄想/本音/無根/吐露/激情/・・その他諸々の五百字詰め。毎日更新!


by ヘーマ

「コンパートメントNo.6」寸評

 でもって2本目のこちらは期待大。


 210日から公開していたというのに見逃していた。三島or沼津で遅れて上映されるだろうと思っていたが肩すかし。まさか「新宿シネマカリテ」でロングランしているとは。きっと口コミで動員を増やしていったはず。いい事である。これはフィンランドもの。舞台は1990年代のロシアだ。


 考古学を学ぶインテリ女子学生(レズ)が、世界最北端に位置するムルマンスク駅まで長距離移動していくロードムービー。モスクワから約3日間。2000キロの行程。寝台列車2等席「コンパートメントNo.6」がその番号というわけ。相乗りとなった若い男性は出稼ぎ炭鉱夫。デリカシー、マナー、教養ナシというタイプである。


 お互いまるで接点がなく、のっけから最悪な印象を抱いた2人が徐々に打ち解けていく。よけいな説明を極力排除、意味や含みを持たせる場面がたくさんあった。「解釈はご自由に」「2人の行末は?」それは見た人が勝手に決めていいのだ。個人的にこういう作風は大好物である。


 それと、極寒の北極圏の寒々しい風景もたまらなかった。彼女の目的は、ムルマンスクから船で渡ったところにあるペトログリフ(5000年前の岩面彫刻)を見ること。ボクが感心したのはここ。目的達成する為に地獄絵図のような超寒冷地まで来たというのに、彫刻なんてどうでもよくなっている彼女の心理描写である。


 目的が目的でなくなってしまった様(さま)を、監督は実にあっけなく仕立てた。勇気いるよ、これは。う〜ん、もう1回見ればまた新たな発見があるのかも。かなり奥行きがある。後から知ったことだが、カンヌ映画祭グランプリ獲得、世界各地の映画祭17冠、アカデミー外国映画賞はスルーか?あのね、そもそも監督の美意識や美学がスクリーンに滲んでこないようでは映画とは呼べないのだよ。

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※「何処へ行くのではない、何に逃げているかだ」冒頭に名言あり。この一言で脳のスイッチがONになりました。

ヘーマ


by h72ogn | 2023-04-11 08:46